Webディレクターの仕事内容を、企画・制作・公開後の3フェーズで分解。制作会社ディレクターの1日を時間帯ごとに再現し、PMとの違いを5観点で整理、制作会社と事業会社の違い、使うツールと2026年のAI時代に残る役割を解説します。
この記事でわかること
- Webディレクターの仕事を企画・制作・公開後の3フェーズで分解した「何をしているか」の全体像
- 制作会社ディレクターの典型的な1日を、時間帯ごとの業務で再現
- ディレクターとプロジェクトマネージャー(PM)の違いを、現場感覚で5観点に整理
- 制作会社と事業会社(インハウス)で仕事内容がどう変わるかと、選び方の判断軸
- 日常的に使うツール・最低限のスキルマップと、2026年のAI時代に残る役割
結論を先に書きます
Webディレクターは、ひとことで言うと「意思決定を引き取る人」です。デザインもコードも書かないのにプロジェクトの中心にいるのは、クライアントの曖昧な要望を要件に翻訳し、制作チームの作業を進行可能な形に組み立て、公開後の効果検証まで責任を持つ役割だからです。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、Webディレクターは「Webサイトの企画・制作の進行管理を担う職種」と記述されています。肩書きの定義より「現場で何をしているか」を主軸に整理したほうが、目指す人にも発注側にも役立ちます。
- 仕事は企画フェーズ・制作フェーズ・公開後フェーズの3つに大きく分かれる
- 1日の中心は「詰まりの解消」と「社内承認スケジュールの管理」
- PMとの違いは「いま誰の意思決定を引き取る立場か」で考えると分かりやすい
- AIが制作工数を縮めるほど、「何を作るべきか」を判断する価値は上がる
「Webディレクター 仕事内容」「Webディレクター PM」「Webディレクター 制作会社」で検索する人が知りたいのは、(1) 一日の業務の中身、(2) PMとの違い、(3) ディレクターを名乗るために何を積むべきか、の3点に集約されます。肩書きの定義ではなく「現場で起きていること」に沿って、順に整理していきます。
Webディレクターの仕事を「3つのフェーズ」で分解する
Webディレクターの仕事は、企画フェーズ・制作フェーズ・公開後フェーズの3つに分かれます。職種としての定義は厚生労働省「job tag」が「企画・制作の進行管理を担う職種」とまとめていますが、実務はこの3区分で見たほうが具体的です。
- 企画フェーズ:要件定義・情報設計・KPI合意
- 制作フェーズ:進行管理・品質管理・社内合意形成
- 公開後フェーズ:運用設計・効果測定・改善ループ
企画フェーズ:要件定義・情報設計・KPI合意
最初に向き合うのは「クライアントが本当に解きたい課題」です。発注書には「サイトをリニューアルしたい」と書かれていても、本当の目的は別にあることが多いもの。
- 営業部の負担を減らしたい
- 採用応募数を増やしたい
- IRページで投資家への説明工数を減らしたい
こうした本音の目的を、ヒアリング・課題整理・サイトマップ作成・ワイヤーフレーム設計・KPI合意まで落とし込むのが企画フェーズの仕事です。ここを曖昧にすると、後工程がすべてズレます。
制作フェーズ:進行管理・品質管理・社内合意形成
デザイナー・コーダー・フロントエンド/バックエンド開発者・ライター・撮影クルーをアサインし、ガントチャートで進行を組みます。
ここで効いてくるのは、制作スケジュールの管理よりも社内承認スケジュールの管理のほうです。クライアント側の承認ルート(担当者→課長→部長→役員)が回るのに2週間かかるなら、デザイン提出を2週間前倒しする。この読みがディレクターの現実的な仕事になります。
公開後フェーズ:運用設計・効果測定・改善ループ
「公開して終わり」のサイトと「公開してから伸びる」サイトの差は、公開後フェーズの設計にあります。
Search ConsoleとGoogle Analytics 4(GA4)のレポート設定、ヒートマップ計測、KPI月次レビュー、コンテンツ追加スケジュール。あるコーポレートサイトのリニューアル案件では、公開後3か月の改善施策で問い合わせフォームの送信完了率(CV率)が大きく改善しました。効いたのは派手な改修ではなく、フォーム入力ラベル・項目数・確認画面の文言の最適化です。
公開後の改善設計をさらに掘り下げたい方は、コーポレートサイトのリニューアルの進め方もあわせてどうぞ。
ディレクターの「1日」を時間帯別に追う
抽象論より、実際の1日を追ったほうが具体的です。ここでは中規模制作会社のディレクターの典型的な1日を、時間帯ごとに再現します。
| 時間帯 | 主な業務 | この時間の核 |
|---|---|---|
| 09:30 | メール・チャットのトリアージ/ToDo再構築 | 当日タスクを5〜7件に圧縮 |
| 10:30 | 制作チーム朝会(15分) | 「詰まり」の解消を引き取る |
| 11:30 | クライアント定例 | 制作でなく「事業の話」を主軸に |
| 14:00〜17:00 | 制作物レビュー・社内調整 | 事業とUI部品を行き来 |
| 17:30 | 翌日準備・進捗報告メール | 毎日続けられるかが分水嶺 |
09:30 出社直後:連絡のトリアージとToDo再構築
前日夜から朝にかけて溜まった連絡を、緊急度×影響度で分類します。「朝イチでデザイン承認が来た」「コーダーから仕様確認が3件」「営業から新規案件の打ち合わせ依頼」。
最初の30分で当日のToDoを5〜7件に圧縮するのが、1日を崩さないコツです。
10:30 制作チーム朝会:進捗共有と障害物の洗い出し
デザイナー・コーダー・ライターを集めて、各タスクの「終わった/進行中/詰まっている」を15分で確認します。価値の中心は、「詰まっている」が出たときにディレクターがその解消を引き取ること。
「仕様が不明瞭なのでクライアントに確認します」「APIの返り値の仕様を開発側に依頼します」——ここを後回しにすると、3日後に制作全体が止まります。
11:30 クライアント定例:要件確認・課題提示・宿題確定
クライアントとの定例は、「制作の話」ではなく「ビジネスの話」を主軸にします。
「先週公開したキャンペーンページのCV率が3.2%。同業平均が1.8%なのでまずは合格水準ですが、フォーム到達後の離脱が高い。次回までに改善案を3つ提示します」
このように、制作の進捗より「クライアントのビジネスがどこに向かっているか」を会話の中心に据えるのが、信頼につながります。
14:00〜17:00 制作物のレビューと社内調整
午後はデザイン・ライティング・コーディングの中間成果物のレビューです。
- ボタンの色がブランドガイドラインから少しズレている
- コピーが業界用語を使いすぎて、発注側の課長が読めない
- フォームの確認画面で個人情報の取り扱い同意チェックが抜けている
ディレクターの目は、マクロ(事業)とミクロ(UI部品)を行き来します。
17:30 翌日準備と翌週見通し更新
ガントチャートを開いて当日の進捗を反映し、遅延があれば翌日以降のタスクをずらすか人員を追加するかを判断。クライアントへの進捗報告メールを1通送って退社します。これを毎日続けられるかどうかが、ディレクターとして1年生き残れるかの分水嶺になります。
なお、こうした業務の前提となる職種の全体像はWebディレクターとは?仕事内容・必要スキル・年収・なり方でも整理しています。
ディレクターとプロジェクトマネージャー(PM)の違い
両者の境界はグレーで、会社によって定義が異なります。一般的に言われる差を、現場感覚で整理します。
| 観点 | Webディレクター | プロジェクトマネージャー(PM) |
|---|---|---|
| 主な範囲 | 1案件の企画〜進行管理〜納品 | 複数案件 or 大型1案件の全体統括 |
| 主な評価軸 | 1案件の品質・納期・予算 | プロジェクト群のROI・リソース最適化 |
| 関わる相手 | クライアント担当者・制作チーム | クライアント役員・社内経営層・パートナー会社 |
| 必要な視点 | UX設計・UI判断・制作工程 | 経営視点・予算配分・リスク管理 |
| 役割の移行 | 数案件積み上げるとPM候補に | PM経験を積むとプロデューサー・事業責任者へ |
実務では、境界の言葉より「いま、誰の意思決定を引き取る立場にいるか」を意識するほうが役立ちます。ディレクターからPM、PMから制作部門の責任者へとロールが変わっても、判断の重心がどこにあるかで自分の役割が見えてきます。
「制作会社」と「事業会社」でディレクターの仕事はどう違うか
同じディレクターでも、制作会社と事業会社(インハウス)では中身がかなり違います。
制作会社のディレクター:複数クライアント × 短サイクル
制作会社ディレクターは、同時に5〜10案件を抱えるのが標準です。1案件あたりの期間は2〜6か月。納期・予算・スコープを守って、複数のクライアントを並列で回し続けます。視点は短中期で、案件ごとの完結性を高める方向に寄ります。
事業会社(インハウス)ディレクター:1〜2サイト × 中長期
事業会社ディレクターは、自社サイトの責任者として長期で同じ資産を育てる立場です。期間は無期限。事業数値(売上・問い合わせ・採用)への直結度が高く、社内の事業部・営業部・マーケ部との横連携が日常的に発生します。
どちらを選ぶかは「キャリアの伸ばし方」次第
- 短期で多様な業種の案件を経験し、量的な引き出しを増やしたい
- 納期・予算管理を高速で回すスキルを磨きたい
- 幅広いジャンルのサイト構築を一通り見ておきたい
- 腰を据えて1事業のWeb成果をじっくり伸ばしたい
- 売上・採用など事業数値への貢献を実感しながら働きたい
- 社内の他部署と連携して、長期で資産を育てる仕事に魅力を感じる
どちらが上で、どちらが下ということはありません。3年後に「どの種類の判断を引き取る立場にいたいか」から逆算するのが現実的です。
現役ディレクターが使うツールと最低限のスキルマップ
「何ができればいいですか」と聞かれたら、答える順序はだいたい決まっています。ドキュメンテーション→コミュニケーション→技術理解→分析・計測の4層です。
ドキュメンテーション(最重要・時間の8割がここ)
- Notion / Confluence:要件定義書・議事録・サイトマップ・KPI設計書
- Figma / Adobe XD:ワイヤーフレーム作成、デザインへのコメント
- Googleスプレッドシート / Excel:見積書・ガントチャート・進捗管理
コミュニケーション(クライアント・社内)
- Slack / Teams / Chatwork:日常コミュニケーション、決定ログの場
- Zoom / Google Meet:定例・キックオフ・社内合意形成
- メール:正式な確定通知・契約書のやり取り
技術理解(書けなくてもいい、読めるレベル)
- HTML / CSSの基本(W3C/WAICの仕様概要を参照)
- WordPressの管理画面操作・テーマ/プラグインの仕組み
- レンタルサーバー・DNS・SSLの基本(サーバー比較はレンタルサーバー比較ノートで別途整理)
分析・計測
- Google Analytics 4(GA4):基本レポート・カスタムイベント
- Google Search Console:検索パフォーマンス・インデックス状況
- ヒートマップ(Microsoft Clarity・Hotjar):UX改善の起点
最低ラインは「コードを書けなくても、コードが指す意味を読み解ける」状態です。これがあれば制作チームとの会話が成立します。
なお、ディレクターと近いようで役割が異なる職種に、Webデザイナーがあります。違いを知りたい方はWebデザイナーとは?仕事内容・必要スキル・なり方もご覧ください。
2026年のAI時代に、Webディレクターの仕事はどう変わるか
ChatGPT・Claude・GitHub Copilotなどの生成AIが普及した2026年、ディレクションの仕事は「消える」と言われます。しかし現場感覚では逆で、コードを書く時間が短くなる分、要件定義と品質判断にかける時間が増えているのが実態です。
IPA「DX白書」でも、DXを推進する企業ほど「企画・上流工程を担う人材」の不足を強く認識していると示されています。AIが制作の物理的な工数を縮めるからこそ、「何を作るべきか」を判断するディレクターの価値は上がる、という構図です。
| 観点 | AIで短縮できる領域 | AIでは短縮できない(ディレクターの価値が残る)領域 |
|---|---|---|
| 企画 | — | 「言葉になっていない課題」を引き出すヒアリング |
| 設計・制作 | ワイヤーフレーム初版・コーディングのボイラープレート生成 | 制作物の品質判断(ブランド適合・UX妥当性・トーン) |
| コピー | ライティングの叩き台 | コピーの最終トーン調整・ブランド適合 |
| 進行 | 議事録の文字起こしと要約 | ステークホルダー間の合意形成と意思決定の引き取り |
| 公開後 | レポートの一次集計 | 公開後の効果検証と改善判断 |
つまりAIは「手を動かす工程」を圧縮しますが、「何を作るか・どう判断するか」は人の領域として残ります。ディレクターはこの判断の部分に時間を寄せていくことになります。
Webディレクターに関するよくある質問(FAQ)
Q1. 未経験から制作会社のディレクターになれますか?
可能ですが、最低限の制作経験(コーディング・デザイン・WordPress構築のいずれか)を半年〜1年積んだ上で、アシスタントディレクターから入るルートが多いです。「いきなりディレクター」は、5〜10案件を並列で回す現実に対応しきれないリスクがあります。
Q2. 給料はどれくらいですか?
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」では、Web関連職種の賃金は規模・業種で大きく分散しています。会社・案件規模・担当範囲で幅が広いので、求人票の額面より「どの規模の案件をディレクションできる立場か」を見るほうが、長期キャリアの判断材料になります。
Q3. デザインやコーディングはできなくても良いですか?
「自分で作れる」必要はありません。ただし「制作物を読み解き、改善を依頼できる」レベルは必須です。デザインのジャンプ率・コーディングの保守性・WordPressのテンプレ構造を概念で理解しておくと、制作チームとの会話が成立します。
Q4. PMに昇格するためには何が必要ですか?
1案件のディレクションを5〜10件単位で経験し、「クライアントの事業数値に直結する判断」を引き取れるようになることです。加えて、PMは複数案件×複数チームを同時に統括するため、リソース計画と予算管理のスキルが必須になります。
Q5. ディレクターに資格は必要ですか?
必須の国家資格はありません。Web検定・ウェブ解析士・PMPなどの民間資格は体系的学習の証明にはなりますが、現場では「資格保有」より「直近の担当案件の中身」のほうが評価される傾向があります。
Q6. 制作会社と事業会社、最初はどちらに入るのが良いですか?
量的経験を短期で積みたいなら制作会社、特定領域に深く張りたいなら事業会社です。どちらが上下ということはなく、「3年後にどの種類の判断を引き取る立場にいたいか」から逆算するのが現実的です。
まとめ:Webディレクターは「判断を引き取る人」
この記事の要点を整理します。
- 仕事は企画・制作・公開後の3フェーズに分かれ、各段階で要件・進行・改善の判断を担う
- 1日の中心は「詰まりの解消」と「社内承認スケジュールの管理」
- PMとの違いは「いま誰の意思決定を引き取る立場か」で考えると整理しやすい
- 制作会社は多案件・短サイクル、事業会社は1〜2サイト・中長期で性格が異なる
- AIが工数を縮めるほど、「何を作るべきか」を判断するディレクターの価値は上がる
本記事は、制作会社での実務経験と、厚生労働省 職業情報提供サイト「job tag」・情報処理推進機構(IPA)「DX白書」等の公的情報源を突き合わせた整理です。
ディレクターの仕事は、肩書きで定義するより「意思決定の引き取り役」として捉えたほうが現場感覚に近いといえます。クライアントの曖昧な要望を要件に翻訳し、制作チームの作業を進行可能な形に組み立て、公開後の効果検証まで責任を持つ。ディレクターは「動かす人」ではなく「決める人」です。
費用面からこの仕事を理解したい方はWebサイトの制作費はなぜこの金額になるのかを、独立を視野に入れる方はWeb制作 副業の始め方もあわせてご覧ください。
免責事項
※本記事はWeb制作・ディレクションの実務知見と、厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」・情報処理推進機構(IPA)「DX白書」等の公的情報をもとにした整理です。業務内容・給与・雇用形態はプロジェクトや会社によって異なります。個別のキャリア判断・転職相談は、各社の採用担当者または専門のキャリアアドバイザーにご確認ください。

